感性を高めるために刺激を減らす(ウクレレから味覚まで)

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「遅く弾く練習」の効用について
 
ボディワークの先生からの返信です。
参考になるので掲載しますね。
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高橋先生
 
先日いただいたメールのお返事です。
遅くなってすみませんでした。
 
 
そうですね、フェルデンクライスのレッスンでは、
感じる力を高めると、違いがわかるようになり、
その違いがどのような動きをした時に起きるかが
区別できるようになる。

すると同じ動作をする時でも、
例えばコップの水を飲む時という動作をするにしても、
 
いくつかの方法があることがわかり
(コップの持ち方ひとつをとっても、
 

  コップのどの部分を持つのか、
  上の方なのか下の方なのか。
 

  指の使い方、
 

  人差し指と親指で持つのか
  五本の指を使うのか、
 

  コップが口に近づくのか、
  口がコップに近づくのか等、
 

挙げたらきりがないですね)
 
 
その時にどんな感情がわくのか
 
(やりやすくて良い気分、やりにくい、辛くて不快な感じ)
 
など観察して、様々な選択肢があることに気づく。
 
 
するとその中で自分にとって効率の良い、
体もそのように使えて楽で、優雅なやり方を発見する。
 
もちろんそれ以外の不快なやり方も知ってるから
選択することができる。
 
その違いを感じるには、
刺激を少なくすることで得られる。
 
小さなとか、
ゆっくりと
 
というのはそのためです。
 
日中、太陽の下で懐中電灯を灯しても
懐中電灯の明るさに気づきにくい。
 
でも
 
夜の外なら懐中電灯の明るさはよくわかる。
 
 
駅のアナウンスがうるさいホームで
囁いても聞き取りにくいが、
深夜の静かな部屋だったら充分聞き取れる。
 
僅かな違いを感じる、
感性を高めるには刺激を減らすことが大事。
 
ゆっくり働く運動皮質、
動作を組織する脳の部分がやっていることを
追いかけられるようにゆっくり動くのは大事です。
 
 
なぜなら速い動きをすると
経験によって既に身につけている自分のパターン
を呼び起こしてしまうからです。
 
 
変化を望むなら動きの速度を
2~3倍に遅くすることが望ましいと、
モーシェは言ってます。
(フェルデンクライスの創始者:高橋注)
 
 
また機械的な反復運動でもなく
「鍛える」ということでもなく、
楽しんで、疲れる手前迄で行うことで
脳は何か新しいものを学ぶようです。
 
 
赤ちゃんの成長の過程のイメージですね。
 
寝返りもうてなかった赤ちゃんが、
ハイハイを経て立って歩くまでの動きを、
試行錯誤の末、獲得してきますが、
努力する赤ちゃんって聞いたことないですよね。
 
疲れたらやめて寝ちゃう。
あきたらもうやらない。
おもしろいことだけをやる。
 
これが良い学びのポイントみたいです。
 
脳は快適なものを学び、
不快なことは採用しないそうです。
 
ですので、高橋先生のおっしゃるように、
ウクレレの演奏もゆっくりやって、
動きの小さな違いに気づいて、
 
いくつかのパターンができることをわかった上で、
選択して行い、
新たなパターンとして獲得できたら
それを同じクオリティーで速くも弾けるように
なるのかもしれませんね。
 
 
後略
 
さがら
 
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相良先生
ありがとうございます!
 
非常に勉強になりますし。
今やっていることへの確信もわきました。
 
 
とくに仰る
 
 
「僅かな違いを感じる、
 感性を高めるには刺激を減らすことが大事。」
 
 
という部分が、音楽にとってもそうですし
味覚と調味料の問題、
あらゆる人間活動の問題に
 
深く関わっているような印象を持ちました。
 
 
感性を高まめるために
最新のものを、最速のものを
とにかく良さそうなものをできるだけ沢山
見聞きしようとすると
 
 
かえって感覚がおかしくなるような
そんなおそろしさを感じていたのですが
やはり、ある面正解なのかもしれません。
 
 
そして、そういう感覚がぼけてしまうと
緻密なものや微妙な作品の味わいもわからず
やみくもに刺激の大きさに走るでしょう。
 
鑑賞できませんから、創作はもちろんできません。
 
 
難しい部分もありますが
まずは、刺激を減らしていきましょう。
 
そしてゆっくり練習することにより
パターン化された行動をいちど見直し
ある時期に、精度の高いものに再構築する。
 
 
どぎつくないけど、なんとなく良い作品とか
印象のよい、素敵に感じる人、もの、こと
というのはすべからく精度が高いような気がします。